
SNSアカウントの相続と譲渡ガイド|法的位置づけと生前対策
2026.04.29
SNSアカウントを運用する人が亡くなったとき、そのアカウントはどうなるのか。収益化しているYouTubeチャンネルやフォロワー10万人のInstagram、登録者が付いているX(旧Twitter)など、資産価値を持つアカウントが増えた今、相続や生前譲渡をどう扱うかは避けて通れない論点になっている。
ただこの分野は、日本の相続法もプラットフォームの利用規約も明確な答えを出していない。民法上の相続財産に該当するのか、規約違反にならずに引き継げるのか、税務上はどう扱うのか。ネットには断片的な情報しかなく、経営者や運用者が判断に困る場面が多い。
この記事では、SNSアカウントの相続と譲渡について、現時点で分かっている法的な位置づけ、プラットフォーム各社の対応、生前にできる対策、マーケットプレイスでの売却という選択肢まで整理した。士業や相続対策を考える方の判断材料になれば、という趣旨で書いている。
SNSアカウントは相続財産になるのか
結論から言うと、SNSアカウントは民法上の相続財産に該当する可能性はあるが、現実的に相続手続きで引き継ぐのは難しい。理由は大きく分けて2つある。
アカウント自体の所有権という概念がない
日本の民法が相続対象とする「財産」は、所有権や債権といった権利関係が明確なものを前提にしている。一方、SNSアカウントはあくまでプラットフォーム事業者との契約関係で、ユーザーはアカウントを「所有」しているわけではない。利用規約を見れば「ユーザーはサービスを利用する権利を持つ」とは書かれていても「アカウントを所有する」とは書かれていない。
この点、MetaもXもGoogleも同じ構造で、アカウントは譲渡不可とする規約を設けている。したがって「アカウントそのもの」を相続財産として法定相続するのは、規約上の障壁がある。
収益や資産価値の切り分けが曖昧
YouTubeの広告収益アカウントや、アフィリエイト収益のあるInstagramなど、明確に収益を生んでいるアカウントについては、相続財産として申告する必要がある。ただしこの場合も、相続対象になるのは「アカウント」ではなく、それによって生み出される収益権や未払い金、関連する商標や法人契約といった付随する権利だ。
アカウントそのものの評価額を算定するのも難しい。フォロワー数×単価で機械的に計算する方法はあるが、税務署が認める計算式は確立されていない。実務的には「売却したらいくらになるか」のマーケット価格を参考にするのが現実的だが、これもマーケットプレイスの相場がベースになる。
プラットフォーム別の死亡時・譲渡対応
主要SNS各社は、アカウント保有者が亡くなった場合の対応をそれぞれ定めている。前提として、いずれも「遺族が引き継いで運用する」ことは想定されていない。
Instagramとの対応
Instagramの運営元であるMetaは、死亡したユーザーのアカウントについて2つの選択肢を用意している。1つは「追悼アカウント化」で、プロフィールに「追悼」と表示され、投稿は残るが新規ログインや変更ができなくなる。もう1つは近親者からの申請による削除だ。
追悼アカウントや削除の申請には、死亡証明書や出生証明書などの書類提出が必要になる。いずれにせよ、遺族が故人のアカウントをそのまま引き継いで運用することは認められていない。
X(旧Twitter)の対応
Xは、家族または権限を持つ人物からの申請があれば、死亡者のアカウントを停止する手続きを用意している。追悼機能はなく、選択肢はアカウント停止のみだ。
申請には死亡証明書と申請者の身分証明書の提出が必要で、手続き完了までに数週間かかるケースが多い。アカウント自体を引き継ぐ仕組みはない。
YouTubeとGoogleアカウントの対応
YouTubeはGoogleアカウント全体の一部として扱われるため、Googleの「故人のアカウントに関するリクエスト」ページから申請する。この場合、遺族はGoogleからデータの提供を受けたり、アカウントを閉鎖したりできる。
ただし、収益化されているYouTubeチャンネルの未払い広告収益については、法定相続人への支払いが認められるケースがある。この手続きはGoogleのサポートと個別にやり取りする必要があり、書類も多い。チャンネル自体を引き継いで運用することは規約上許されていない。
TikTokとその他のプラットフォーム
TikTokはアカウント停止の手続きがあるが、追悼機能や遺族への引き継ぎは明確に規定されていない。FacebookはMeta傘下なのでInstagramと似た追悼アカウント化の仕組みがある。Threadsも同様だ。
公式LINEアカウントについては、法人契約の場合は契約を引き継ぐ形になり、個人アカウントとは扱いが異なる。LINE公式アカウントの管理者変更は可能なので、事前に共同管理者を設定しておくのが現実的な対応になる。
生前にできる対策
プラットフォームの規約上アカウントの相続は難しいので、資産価値のあるアカウントを持っている場合は、生前に対策を取っておくのが現実的だ。
共同運用体制を整えておく
個人で運用しているアカウントを、生前から法人名義や共同運用の体制に移行しておくと、万が一のときに事業を止めずに済む。具体的には、法人のInstagramビジネスアカウントに移管する、Facebookページの管理者を複数人登録する、YouTubeのブランドアカウント化して複数管理者を設定する、といった対応が考えられる。
LINE公式アカウントは特にこの対応が取りやすく、管理者を複数人登録しておけば、1人に何かあってもサービスが止まらない。
生前譲渡という選択肢
相続で引き継ぐのが難しいなら、生前にアカウントを売却または譲渡しておく方法もある。特に高齢の経営者が運用しているビジネスアカウントや、収益化しているYouTubeチャンネルを、後継者が決まっていない段階で売却して現金化しておくのは、資産整理の観点で合理的だ。
この場合、アカバイのようなSNSアカウントのマーケットプレイスを使えば、エスクロー決済を通して安全に売却できる。個人間の直接取引だと、代金のやり取りや引き渡しのタイミングで揉めるケースがあるが、第三者が決済を仲介すれば双方にとって安心だ。購入者手数料は0%、出品者手数料は5%になる。
相続人向けの引き継ぎメモを残す
アカウントそのものを譲渡できなくても、関連する収益や法人契約については相続の対象になる。具体的には、YouTubeの広告収益の受け取り口座、アフィリエイトサービスとの契約、商標や屋号、関連するドメインやサーバー契約といったものだ。
これらを誰が把握しているか、どこに書類があるか、ログイン情報はどう管理しているかを、信頼できる家族や顧問税理士と共有しておくと、いざというときに事業が混乱しない。エンディングノートのSNS版として、運用しているアカウント一覧と収益情報をまとめておくだけでも価値がある。
税務上の扱いについて
収益化しているSNSアカウントが相続財産に含まれる場合、税務上の扱いは少し複雑になる。
未払い収益は相続財産
YouTubeの広告収益、Instagramのブランド案件報酬、アフィリエイト未払い金といった「死亡時点で発生している未払い債権」は、明確に相続財産として扱われる。これは通常の金銭債権と同じ扱いなので、相続税の申告対象になる。
アカウントの評価額は未確立
一方、アカウント自体の時価評価については、国税庁が明確な算定方法を示していない。実務的には、マーケットプレイスでの取引相場や、フォロワー単価×フォロワー数といった計算式を参考に、税理士と相談しながら評価額を決めるのが現実的だ。
フォロワー1万人のInstagramが15万円から40万円で取引されているアカバイの相場を参考に、相続税申告の資料にする、といった使い方をしている税理士も一部にはいる。ただし税務署が認めるかは個別判断になるため、相続が発生する前に専門家に相談しておくのが安全だ。
譲渡所得として処理する場合
生前にアカウントを売却した場合、売却益は譲渡所得または雑所得として申告することになる。個人が趣味で運用していたアカウントを売却した場合は雑所得、事業として運用していた場合は事業所得や譲渡所得として処理する。どの区分になるかは運用実態によるので、税理士に相談するのが確実だ。
資産価値のあるアカウントを持っている人への提案
ここまで見てきたように、SNSアカウントの相続は法的にもプラットフォーム規約的にも、スムーズに引き継げる仕組みが整っていない。これは日本に限った話ではなく、世界的にも同じ状況だ。
だからこそ、資産価値のあるアカウントを持っている人は、生前の対策を早めに取っておく方がいい。法人化して共同管理者を置く、後継者が決まっていなければ早めに売却して現金化する、少なくとも運用情報と収益情報を信頼できる人と共有しておく、このいずれかは必須に近い。
特に個人で数万人以上のフォロワーを抱えるアカウントを持っている経営者や、収益化しているYouTubeチャンネルのオーナーは、自分に何かあったときに家族やビジネスパートナーが困らないよう、今のうちに整理しておく価値がある。
アカバイでは、SNSアカウントを安全に売却できる環境を整えている。エスクロー決済、本人確認、出品審査があり、Instagram・X・YouTube・TikTok・Facebook・公式LINE・Threadsに対応している。生前譲渡や資産整理の選択肢として、マーケットプレイスの活用は検討する価値がある。
相続の問題は、起きてから考えるのでは遅い。運用しているアカウントの価値が大きければ大きいほど、今のうちに整理を始めた方がいい。




